主なワクチンについて

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A型肝炎ワクチン(Hepatitis A)

A型肝炎は加熱処理されていない食べ物や飲み物から感染する病気で、上下水道の整備が悪い国を含めアジア、アフリカ、中南米に広く存在します。流行地域ではミネラルウォーターや一度沸騰させた水、加熱調理してある食品を選びましょう。発症すると入院治療が必要となる場合があり、途上国に滞在する人に接種がすすめられるワクチンです。A型肝炎は小児の場合は罹患しても軽症で経過することが多いとされています。

日本では凍結乾燥型製剤(エイムゲン®)が承認されており、1歳以上に接種可能で、接種回数は3回(2-4週間隔で2回、24週経過後に1回)ですが当院では輸入ワクチンHavrix®を常備しており、接種回数は2回(6か月間隔で2回)となっています。輸入ワクチンHavrix®は、1回の接種で、約1年効果がありますが、2回目を接種すると約15年効果が持続します。

B型肝炎ワクチン(Hepatitis B)

B型肝炎は以前は輸血や医療従事者の注射針による針刺し事故など血液を介した感染が問題とされていましたが、現在では新生児期を中心とした母子感染と、思春期以降の性行為(唾液や体液の濃厚接触)を通じた感染の2つが主な原因となっています。一般に健康な(免疫不全でない)成人の感染では一過性感染が多く、急性肝炎の経過をとるものと感染しても症状が出ない不顕性感染となるものがあります。一過性感染例では劇症化して死亡する例(約2%)を除くと、多くは、およそ3か月で肝機能が正常化します。

ワクチンは4週間隔で2回接種し、さらに、20~24週間後に1回接種します。ヘプタバックス®が流通しており、接種回数は3回(4週間隔で2回、20-24週経過後に1回)です。92%の方が3回接種を完了すると免疫が獲得できます。3回目のワクチン接種後、約1カ月目に採血を実施して抗体価上昇が得られないばあいは、再度3回接種を追加すると、約3割~5割の方が免疫獲得します。

破傷風トキソイド

1968年(昭和43年)からは3種混合ワクチン(DPT)、2012年(平成24年)からは4種混合ワクチン(DPT-IPV)として接種されています。追加の2種混合ワクチン(DT)を12歳時に受けていれば、20代前半くらいまでは免疫が持続するとされています。その後は、1回の追加接種で約10年間有効な免疫がつきます。

年齢に関係なくトキソイドによる免疫がなければ、外傷により発症する可能性があるために全渡航者だけではなく、免疫のない可能性が高い高齢者に対しても積極的な接種が望まれるワクチンです。
1968年以前に生まれた方の大多数は免疫のない可能性があるために、初回免疫の獲得のために3回接種(3-8週間隔で2回、6か月以降に1回)を行うことが推奨されます。海外では成人への追加接種として、通常Tdap(破傷風・ジフテリア・百日咳)ワクチンが使用されています。Tdapは北米に留学する際に10年以内の追加接種歴がなければ要求されるワクチンです。当院では留学される方のためにTdapワクチン(Boostrix®, GlaxoSmithKline社)を常備しております。(対象;10歳以上)

狂犬病ワクチン(Rabies)

狂犬病は、発病すればほぼ100%が死亡する病気です。アジア・アフリカ地域を中心に世界中で発生しています。イヌだけでなくキツネ、アライグマ、コウモリなどの動物に引っかかれたり、咬まれたりすることによって感染し、長期滞在、研究者など動物と直接接触し感染の機会の多い場合や、奥地・秘境などへの渡航ですぐに医療機関にかかることができない人に接種が検討されます。
曝露前(渡航前)には、1ヶ月間で3回の接種が必要です。なお、曝露前のワクチン接種を行っている場合であっても、狂犬病が存在しないとされる限られた国々以外、特に狂犬病発生地域では、動物に引っかかれたり、咬まれたりした場合には曝露後(動物に咬まれた後)にもワクチン接種が必要であることに注意が必要です。

狂犬病の発生が多い地域への長期滞在、医療機関へのアクセスが不良な地域への滞在、動物との接触の機会があるような渡航者に対しては曝露前接種が推奨されます。接種回数は基礎免疫の獲得として3回で曝露前接種スケジュールでは0, 7, 21または28日です。米国予防接種諮問委員会(The Advisory Committee on Immunization Practices;ACIP)は2022年5月に接種スケジュールを0, 7日の2回でも3年程度の免疫の獲得ができると変更しています。
曝露前接種を受けていない場合には、WHOが推奨するスケジュールは咬傷後0, 3, 7, 14, 28日の5回接種(日本では4~6回)が必要となり、0日目に抗狂犬病免疫グロブリン(Human rabies immunoglobulin; HRIG)の投与を受ける必要がありますが、日本ではHRIGは市販されていません。曝露前接種を受けていればHRIGは不要で、追加接種は咬傷後0, 3日のみで済みます。

腸チフスワクチン

感染して1~3週間は症状がなく、その後、高熱、頭痛、全身のだるさ、高熱時に数時間現れる胸や背中、腹の淡いピンク色の発疹、便秘などの症状が現れます。熱が高い割に脈が遅いのが特徴的です。重大な症状として、腸から出血したり、腸に穴が開いたりすることがあります。

治療は、効果のある抗生物質を長期間服用します。南アジアなどでは薬剤耐性菌も多く報告されています。腸チフスは開発途上国を中心に流行がみられていますが、特にインドをはじめとする南アジアが高度流行地とされています。流行地への滞在の際は短期でも推奨されるワクチンです。1回接種で、3年ごとに追加接種が必要となります。

日本脳炎ワクチン(Japanese encephalitis)

日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを保有する蚊に刺されることによって起こる重篤な急性脳炎で、死亡率が高く、後遺症を残すことも多い病気です。流行地である東アジア、南アジア、東南アジアへ行く人に接種が検討されるワクチンです。
媒介蚊の生息域拡大などにより、これまで非流行地であったオーストラリア地域でも患者の発生が続いています。ワクチンは1~4週間隔で2回接種し、約1年後に追加接種を行います(基礎免疫)。基礎免疫の完了後は、1回の接種で4~5年間有効な免疫がつきます。1960年代には年間1000人程度の患者が発生していましたが、1967年(昭和42年)から1976年(昭和51年)にかけて、小児及び高齢者を含む成人へ、積極的にワクチンの予防接種を行い罹患者が激減し、2013年には9人となりました。その後、日本脳炎ワクチン(マウス脳由来)は、ADEM(急性散在性脳脊髄炎)との関係を否定できないとされ、2005年に積極的推奨が差し控えられました。

2009年に新しいタイプのワクチン(乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン)が承認され、2010年より勧奨接種が再開されています。過去の接種歴とリスクを鑑みてワクチン接種の計画をたてる必要があります。未接種者の場合、接種回数は3回(4週間隔で2回、おおむね1年後に追加接種)です。

ポリオ

ポリオウイルスによって、急性の麻痺が起こる病気です。ポリオは、ポリオウイルスが人の口の中に入って、腸の中で増えることで感染します。増えたポリオウイルスは、再び便の中に排泄され、この便を介してさらに他の人に感染します。成人が感染することもありますが、乳幼児がかかることが多い病気です。感染しても95%の人は症状が現れずに、知らない間に免疫ができます。しかし、感染してから3日から35日後に、発熱、頭痛、のどの痛み、吐き気、嘔吐などのかぜに似た症状が現れることがあります。さらに、腸管に入ったウイルスが脊髄の一部に入り込み、主に手や足に弛緩性麻痺(だらんとした麻痺)が現れ、その麻痺が一生残ってしまうことや、呼吸困難で死亡することもあります。日本の定期の予防接種では、平成24年8月までは経口生ワクチンが使用されていましたが、平成24年9月以降は注射の不活化ポリオワクチンが使用されています。

ポリオが発生している国に4週間以上の長期滞在を予定している方は、過去にポリオの予防接種を受けたことがあっても、渡航前に追加で接種することが世界保健機関(WHO)より推奨されています。特に、1975年から1977年生まれの方はポリオに対する免疫が低いことが分かっており、この世代の方については追加接種が推奨されます。また、定期の予防接種(四種混合)を終えてない方や、これまでに一度もポリオの予防接種を受けたことがない方は、長期滞在をしない場合であっても、渡航前に予防接種を受けることが推奨されます。

髄膜炎菌ワクチン(Meningococcal meningitis)

膜炎の流行を起こす唯一の細菌で、化膿性髄膜炎を起こします。人から人へ直接感染します。年間30万人の発症者に対して3万人が死に至る致死率の高い病気です。感染症法では5類に分類されています。患者の咳やくしゃみで生じた飛沫が気道に入り、血中から髄膜に達して、炎症を起こします。1~14日の潜伏期間の後に、頭痛、発熱と、首を動かしにくくなる硬直が起こります。髄膜だけでなく、全身に細菌感染が及んでいるので、急激に症状が悪化したり、精神状態が変化することがあります。治療しなければ例外なく死に至ります。
髄膜炎菌にはいくつかのタイプがあり、A群はアフリカのサハラ砂漠の南側、髄膜炎ベルト地帯と呼ばれる大西洋からインド洋に至る東西に細長い地域が流行の中心ですが、メッカへの巡礼など人が密集する環境により西アジアでも時に流行が見られています。日本や欧米でもB群、C群、Y群、W-135群などが学生などの間で集団感染を起こしました。

予防には、髄膜炎菌のA、C、W、Y群に対する4価結合型ワクチンが有効ですが、このワクチンではB群は予防できません。髄膜炎菌は13種類の血清型が確認されていますが、侵襲性髄膜炎感染症は5つの血清型(A, B, C, Y, W135)によって引き起こされます。北米、英国などで集団生活を送るに当たり接種が必須であることもあります。当院では、髄膜炎菌のA、C、W、Y群に対する4価結合型ワクチン;メンクアッドフィ®が常備されています。

黄熱ワクチン(Yellow fever)

黄熱はサハラ砂漠以南のアフリカ地域と南米で発生がみられています。流行国の中には国際保健規則(International Health Regulation; IHR)に基づき、入国時に黄熱ワクチン接種証明書(イエローカード)の提出が要求されるため、該当国へ渡航する場合は接種が必須となります。
国内での接種は厚生労働省検疫所や一部の指定医療機関に限られていますので、当院では接種できません。

接種を希望される方は、こちらの厚生労働省ホームページをご覧ください。

ダニ媒介性脳炎ワクチン(Tick-borne encephalitis)

ダニ媒介性脳炎はフラビウイルスによる人獣共通感染症で、シベリアや極東地域で流行があるロシア春夏脳炎と東欧を中心として流行がある中央ヨーロッパダニ媒介性脳炎の2つの病型があります。流行地域でも特に農作業や森林事業に従事する方、ハイキングやキャンプをする方、アウトドアスポーツをする方などに推奨されます。
接種回数は3回で、1〜3か月間隔で2回、初回から5〜12か月後または9〜12か月後に追加接種を行います。当院では、ダニ媒介性脳炎(TBEV)に対するワクチン「タイコバック」の接種を準備中です。添付文書上では1歳以上が対象です。

麻しんワクチン(Measles)

麻しんは感染力が非常に強く、簡単にヒトからヒトに感染する急性のウイルス性発疹性感染症です。主な症状は発熱、咳、鼻汁、結膜充血、発疹などですが、まれに肺炎や脳炎になることがあり、先進国であっても、患者1,000人に1人が死亡するとされています。
日本では、小児期に2回の予防接種が行われ、風しんとの混合ワクチン(MR)が用いられています。
麻しんにかかったことがない方、麻しんの予防接種を受けたことがない方、ワクチンを1回しか接種していない方または予防接種を受けたかどうかがわからない方など麻しん(はしか)への免疫が不十分な方は、予防接種を検討してください。

若年層を中心に十分な免疫を獲得できていない方が少なくはありません。
日本は麻疹排除国としてWHOから認定を受けていることからも、海外から麻疹を持ち込まない、また海外で麻疹を発症しないためにも、最低2回のワクチン接種は必要で、規定の接種を実施していない方や接種記憶の曖昧な方は抗体検査を積極的に実施していただくなど、小児期の定期接種だけではなく、風疹とともにトラベラーズワクチンとしての認識も必要です。

風疹ワクチン

風しんは感染力が強く、ヒトからヒトに感染する急性のウイルス性発疹性感染症です。主な症状は発熱、発疹、リンパ節腫脹などですが、感染しても症状がでない人が15~30%程度います。通常は自然に治りますが、まれに脳炎を引き起こし入院が必要になることがあります。
妊娠20週頃までの妊婦が風しんウイルスに感染すると、生まれてくる子どもが先天性風しん症候群になり、難聴・白内障・心臓の病気などをもって生まれてくることがあり、予防のためには、妊娠前に家族や周囲の人も含めて予防接種を受けておくことが最も重要です。

風しんにかかったことがない方、風しんの予防接種を受けたことがない方、ワクチンを1回しか接種していない方または予防接種を受けたかどうかがわからない方など風しんへの免疫が不十分な方は、予防接種を検討してください。